ゾリヴィヤ国
山脈でも少し平らなところに国境があった。
谷間になっている場所が街道であり、そこに小屋があるだけなので、険しい山脈を通ればその関を通らずに済みそうではある。
「どうやって見張っているか分からないから、変なこと考えなくて良いのよ」
明らかに考えていることがバレた感じのシミリートが、ユリアンネの指摘に頭をかく。
「そういうための魔法もあるんだろうな」
「なるほど。モンタール王国へ帰る、か。1人だけ黒髪で風花の中つ国っぽいのが居るが?」
「はい、中つ国で仲間になって、一緒にモンタール王国へ行ってくれるのです」
「ま、銀級冒険者も居るのだし大丈夫か。ゾリヴィヤ国で変なことはするなよ」
国境での確認も、それぞれの冒険者の証を提示すると、それほど問題なく通過することができた。
「やっぱり言葉がすんなり通じるのはありがたいな」
「中つ国とハンソク王国は言葉が全然違ったものね。この北方諸国家群では言葉が通じるのがありがたいわ」
「フィジみたいな通訳がいなくて良いのは楽よね」
「ま、仲間が増えたみたいで楽しかったけれどな……」
皆は寂しさがまだあるようで少し黙ってしまう。
「ジモ、こっちでの有名な肉料理はなんだ?」
ヨルクがジーモントにいつもの質問をすることで空気を変えようとしたのか。
「そうだな。牛肉を煮込んだ料理でビーフストロガノフっていうのがあるはずだ」
「普通のビーフシチューと何が違うんだ?」
「サワークリームっていう、酸味のあるクリームを使うのが特徴らしい」
「酸っぱいのか?想像つかないな」
「じゃあ、最初の街ではそれを食べるとするか」
シミリートもそれに乗っかり、街を目指す。