国境へ3
照れくさそうなフィジが落ち着いてから話をすると、あまりに多くの額の報酬をもらったところで驚いて思考停止していたが、これではまずいと思ったらしい。
慌てて、以前から目をつけていた螺鈿細工の店でそれを購入し、さらに昨日に再会して挨拶を交わしていた昔の仲間達に頼んでここまで連れて来て貰ったとのこと。
「でも、街道の後ろから追いかけてきたら良いのに」
「何を言っているの。戦馬でしょ、あなた達の馬は。普通に追いつくには、裏道を知っているこの山脈でないと難しいのよ」
「そ、そうか」
「皆さんもありがとうね」
「あぁ、フィジさんの頼みなら何でも」
どう見ても女番長か女親分に従うチンピラにしか見えないフィジと男性陣。
そのことを口にはできないが、良い関係には見える。
「フィジ、最後までありがとうね」
「あなた達も元気でね」
改めて別れを告げて山脈を進むが、蛇行する道のためすぐに後ろが見えなくなる。
「フィジって慕われている感じだったわね」
「中つ国に向かった時の仲間ではないのでしょうけれど、まぁ仲間がいるならば心配はいらないわね」
「フィジがいなかったら、盗賊かと思う登場だったわね」
「ま、あんなチンピラばかりの盗賊にやられはしないけれど」
「フィジも、私たちがあんな奴らに負けないことは十分知っているはず、というのもあって安心していたけれど」
「でも油断はしないようにしないとね」
最後のある意味でサプライズを受け取った一行は、楽しそうにフィジのことを思い出しながら山脈を進む。