国境へ
「じゃあ、私はここで」
「あぁ、本当にお世話になった。ありがとう」
ノムチの西の門でフィジと別れを告げる一行。そして報酬としての布袋を代表して渡すシミリート。
「え?こんなに?流石に多過ぎでしょう!」
「いや、みんなからの気持ちだ。遠慮なく受け取ってくれ」
「風花の中つ国に向かったのは失敗だったようだが、これで少しは立て直しができるかな」
「ふん!あの時の仲間なんて」
「それはあなたが悪かったんじゃないの?」
「う……」
「ま、反省しているのは知っているわよ。私たちに隠れてその仲間の消息を探していたみたいだし」
「な!なんで知っているのよ!」
「冒険者ギルドで聞き込みなんてしたら、私たちの耳にも入るわよ」
「あなた達が行った後を狙って行ったのに」
「何回も行く用事がある時もあるわよ。それにギルドなら中つ国の言葉を話せる人もいるからね」
「はぁ、カッコ悪い……」
「ま、前の仲間とまた一緒に行動するのか分からないけれど、元気でな!」
「またね!」
フィジと別れ、戦馬に乗りゆっくり西に向かう一行。
「なぁ次の通訳を探さなくて良いんだよな?」
「一応、北方諸国家群はビザリア神聖王国と同様に言葉が通じるらしいからね」
「方言などはあるかもしれないけれど、客商売で困るほどの違いじゃないらしいし」
そのような会話をしながら、国境手前の山脈を登り始める。
「お、盗賊に注意が必要そうな場所だな」
「流石に国境付近だと衛兵達も旅人や商人の安全を守っているんじゃないか?」
「それも万全ではないのかも」
行く道の上、斜面の上に騎馬が何頭もいるのが見える。
「あれってフィジ?」
目の良いゾフィが気づく。