ノムチへの街2
「あれ?フィジは?」
「あ、何か用があるって。すぐに戻るって」
宿屋で合流した一行。
「じゃあ、ちょうど良いや。ハンソク王国の貨幣はどのくらい残した?」
「こんな感じね。フィジへのお礼のお金を残そうと思って」
「あ、同じことを考えていたのね」
なんだかんだとフィジにはお世話になったので、皆がそれぞれ意識していたようである。各々がテーブルの上に出したハンソク王国の貨幣が積まれる。
「あ、これは最後にキムチなどを買うためのお金」
「これは今夜の焼肉で支払うためのお金だぞ」
ジーモントやヨルクは、大きな支払いをした残りをフィジに支払うつもりのようだが、特に焼肉屋ではいくら使うかわからないので、多めの貨幣が積まれている。
「ま、確かに良いお店に行くといくらかかるか分からないからな」
いくら9人いても、前世の100万円相当のはずの金貨を使う飲食の店に行くようになった自分をたまに信じられなくなる。大人になる前に死亡したので金銭感覚がわからないと思うことにしておく。
そしてフィジが戻って来たところで、彼女が予約をしてくれていた焼肉屋に向かう。
「フィジが選んでくれる店はハズレがないよな」
「まさか行き慣れている常連ではないよね?」
「まさか!あなた達のお金で食べられるから来ただけよ。こういうお店は、ちょっと高いものを扱う店で教えてもらうのよ。自分の上客を案内したいからってチップを渡して。そこが気に入って貰えたら、あなたの店にも案内するわよって」
「流石はフィジ。でも、その高級品のお店ってのに案内された記憶はないけれど」
「そうね。あなた達には通訳や案内は頼まれたけれど、そういうところに無理に連れていくのは違うと思うから。ま、チップは渡したのだし、2度と行かないと思うお店だから」
「そんなことを気にしてくれていたのね。別に買うか買わないかは自分たちで判断するから、案内してくれても良かったのに」
「あら、そう?じゃあこのノムチの街では不義理をしたくないから明日に行ってくれる?魔道具の店なんだけれど」
「喜んで行くわよ」