蒼海の眼
ユリアンネを冒険者ギルドから尾行していた男2人は悪名高い“蒼海の眼”だというシミリート。
「どうしてそんなクランがユリちゃんを?」
「最初は可愛い子の後をつけただけだと言い張っていたのです。ただ、フードとマスクで顔が見えるわけがなく、じゃあ彼女の髪色は?と問い詰めるとそれぞれ赤色だ茶色だというようにボロがすぐに出まして」
「じゃあ、やっぱり」
「はい、ユリが薬瓶を納品したのを見て、今ギルドが販売している高性能のポーションの調合者かその関係者だと当たりをつけて尾行したと認めました」
「ふぅ。で、その背後は喋ったのかな?」
オトマンとジーモントにも、昼間に冒険者ギルドで言われた貴族や大規模クランの話を伝えてある。シミリートには、ゾフィが尾行者の話をしに行った時に伝えていたようである。
「今度は自分達のクランに腕の良い薬師を勧誘したかっただけと言い始めたが、何か違う感じなんだよな。たぶん、貴族か何かに依頼されていたのを誤魔化そうとしている」
「まさか!」
「あぁ、前の悪徳薬師のこともあるから、衛兵団の拠点で殺しをされないように分隊長以下、交代で見張りをしながら尋問を続けているよ」
「それにしても、また貴族かぁ。この前の麻薬騒動でも貴族かもって話だったよな」
「あぁ、ジモの言う通りだが、あくまでも推測だ。貴族か大商人など権力がある奴が疑わしいって話だ」
「目星はあるのか?」
「ここだけの話、“蒼海の眼”との繋がりが噂されている貴族は居る。ただ今回の件に絡んでいるかは分からない」
「まさか?」
「あぁ、何かと黒い噂のあるシャイデン男爵だ」
「エードルフ・シャイデン男爵。領主インリート・テンフルト・フォン・ストローデ侯爵の寄子貴族でも中堅ですな」