市場の対戦後3
衛兵から、自分達を襲った賊の代金を受け取れたので気が緩む仲間達。
改めてセファンが話しかけてくる。
「それで、皆さんに協力をお願いしたいことがあります」
フィジによる通訳では、北の城門の衛兵から受けた扱いの告発状を作成して欲しいとのこと。
この国の住民では、後での仕返しが不安で協力してくれないのだが、外国人の自分達ならば、と考えているらしい。
「まぁ恨みもあるし、確かにこの国は通過するだけのつもりだから、それほど影響もないと思うけれど。でも、衛兵団の仲間同士でなぜそのようなことを?」
フィジの通訳を前提でカミラが発言する。
通訳されて苦笑いをするセファン。
「疑問はごもっとも。私は小隊長、少尉ですが、平民出身です。北門の小隊長は、貴族出身でありあの分隊長のバンゴンから賄賂を貰うことも当然と思う、腐敗し切った奴なんですよ」
フィジの通訳を聞いた仲間達は、どうも個人的な恨みもありそうだと思いつつ口にはしない。それに、もし出世争いの話などがあろうとも自分達には関係ない。
「私達が認識したり、受けたりした被害については正直にお伝えしますね」
特にカミラが中心に、受けた内容を思い出しながら口頭で話したことをフィジがこの国の言葉でメモをしていく。
セファンは言葉がわからないはずなのに、カミラの感情がこもった発言にいちいちうなずきながら、フィジのメモを横から読んでいるようである。
仲間達が言いたいことも出尽くした感じを待って、途中から同席した衛兵のおそらく事務作業が得意な人物が、フィジのメモを清書していく。
その清書を読んだフィジが驚きながら納得しているので、よほど上手く整理してくれたのであろう。
「本件についてお話し頂いたことに対しては、お礼のお金を渡してしまうと公正な裁きに影響が出ますので、口頭でのお礼だけに」
そう述べたセファンが立ち上がって頭を下げてくる。