市場裏の賊3
流石にこれだけの騒動を起こしたので、衛兵達も駆けつけてくる。
「うーん、まずいな」
「逃げ出すか?」
「手配されてしまうと、この国を安全に出ていくのも大変になるから、そういうわけにも……」
「そこ、何を話している!いい加減、戦いをやめないか!」
シミリート達が戦闘を継続していた十字路でも、賊の後ろ側からも衛兵がやってくる。
ドロテアが≪火壁≫を何度か発動した方向からも来ている。
「はい、はい。私たちはこの賊達に襲われただけですので」
「この人たちの言うとおりです。この方々は、私と一緒にハンソク王国を通過する旅人、冒険者です」
フィジが自分の役割を思い出し、衛兵達に通訳していく。途中からは自分の言葉でも話していることが、ギアマからの通訳で分かるユリアンネ。
「じゃあ、とりあえず回復させておきますか」
ゾフィにダガーを押し当てたのでヨルクに斧で散々やられた賊も、息があったので死なないように≪回復≫魔法を発動しておく。高級回復ポーションを使うのも勿体無いと思える相手だからである。
「ほぉ、回復魔法の使い手がいるのか。ならば、いったん怪我人を治療して貰うか」
「え、また襲われるかもしれないのに、ですか?」
「……命の危険がある者だけでいいぞ」
フィジが衛兵の指示をユリアンネに伝えてくるが、確かに今さら死者を増やしたいとは思っていないので、衛兵が運んできた賊達に最低限の治療をしていく。
「流石にこの状況で、俺たちを疑うことはないよな?」
「ま、人数も相手が多いし、路地を逃げて来たのは、火魔法の痕跡で証明できても……」
「でも、あいつらはこの街の住民だし、あの城門の方の衛兵のこともあるしな……」