裏街道
「そんなの、セグンを通らない道が良いに決まっているじゃない」
「え?でも、そっちを通っても疑われるかもしれないんだぞ?」
「私たちは既に目立つ戦馬に乗る外国人よ。今さらじゃない。その戦馬がスピードを出すには、街の近くを通らない方が良いからって言えば良いのよ」
ユリアンネは前世記憶の、長距離運搬のトラックは都市部を迂回する高速道路を通るイメージかと考えるが、ちょっと違うと首を振ってその思考を消す。
「あら、ユリは違う意見?」
「あ、カミラ、違うのよ。他のことを考えていて。フィジは怪しいのかな?と」
「それは分からないままよね。でも、危ない状況になったときに逃げ出すくらいのことはするかもしれないわよね。そうなると通訳がいないまま捕まると結構面倒になるじゃない?」
「ギアマに通訳させてもぎこちなくて、逆に怪しまれるだろうし、ね」
フィジはフィジで、自分の買い物をしてくると出掛けていたようなので、“選ばれた盟友”の8人だけで相談中である。
「フィジは何を買いに行ったんだろう?」
「女性っていうのは何かしら口にはしたくない買い物があるものなのよ」
シミリートが無神経な発言に繋げる可能性もあったので、ユリアンネが割って入る。
「じゃあ、迂回路になる裏街道を通るってことに決定でいいのかしら?」
「ま、どっちも面倒になる可能性があるならば、港街で美味いものを食べたかったが……」
「さっき貰った金貨で、この街で良いものを食べることにしようか」
経路そのものに反対ではなく残念な旨をいうヨルク。
見計らったように帰ってきたフィジを連れて、ここでも焼肉とキムチを食べられる店舗に行く。
「え?セグンに行かないのですか?」
「今回の何とかの狼っていうのに目をつけられるのも面倒だし、な」
「はぁ、まぁ良いですけれど。港から上がったばかりの魚料理、食べたかったですが」
「フィジも意外と食いしん坊なんだな。ヨルクと一緒に、ここの肉をしっかり食べて」
フィジの残念がる意図が他にもあるのか分からないが、この場では笑顔で食事を楽しむ。