ハンソク王国の旅
宿屋での朝食で、白ごはんや焼き魚以外にキムチが出て来ることに驚く一行。
「ご飯だけでなくお粥だったり、スープも出て来たりすることがあるわよ」
フィジの説明に理解はするが、まだ風花の中つ国くらいの軽い漬物に慣れていたメンバは朝からずっしり辛いキムチに慣れない。
「ま、そういうのも旅の楽しみの一つということで」
相変わらず明るいフィジ。
朝食後は、街と街の間の移動時の食事用の肉や野菜などだけ買い増して、早々にソウムの街を出て行く。
「もう少しゆっくりしても良いのに」
「いや、俺たちは国に帰るのが目的だから。ハンソク王国が目的地ではなく通過だから」
「それはそうなんだけれど」
「何か企もうとしていないか?」
「あら、サンダーさん、私を疑うわね。キムチが成功したから、他に何か無いかな、なんて考えていないわよ」
「考えていますって言っているようなものだろう、それは……」
相変わらず食えない回答をしてくるフィジに、サンダーも扱いに悩む。
そういうやり取りはあっても、街道は特に強い魔物や盗賊に出くわすこともなく、順調に西に進んでいく。
「野営でのジーモントさんの料理ももちろん悪く無いのだけれど、街での贅沢をさせて欲しいわ」
「やっぱり。通訳の役得と思って、良い宿での1人部屋や高級料理を楽しんでいるのだろう?」
「それくらい良いでしょう?行動を一緒にしている間の経費は持ってくれるという約束なんだから」
確かに今のところフィジのおかげで、それほど言葉の問題で困ることもなく旅を続けられている。いざとなれば悪魔ギアマによる通訳を使っても良いのだが、ぎこちなくなるのは確かなので、フィジの一人分を追加で払う程度のことは必要経費と思える。