ソウムの街2
「じゃあ、次は宿ね。でも、あなた達の馬を停められるほど大きな宿なら、高くなるわよ」
フィジが通訳ついでに宿も探してくれるようだが、あまり条件をつけられる立場ではない。
街の入口に近い安い宿は通り過ぎて行き、少し落ち着いた雰囲気のエリアに進む。
「ジモの実家の宿屋くらいのところが良いわよね」
「この人数と馬が泊まれるとなると、うち以上かも、な」
カミラがジーモントと話していると、フィジが中つ国の言葉で割って入る。
「何を話しているの?」
「特に大した話ではないわよ」
「ふーん」
カミラの返事に対して、フィジはそれ以上の指摘はしないが納得はしていないようである。
『実家の話など、あまりフィジに伝えなくても良いことだしね』
カミラ自身は、ジーモントの話だからということを自覚していないようである。
「こんな感じの宿ではどうかしら?」
フィジが立ち止まったところは、確かに高すぎはしない良い選択肢に思える。
フィジが宿屋の従業員と交渉に行った際、再び悪魔ギアマにこっそり通訳させるが特に問題のある会話はしていない。
「あなた達が男女4人ずつの部屋、それと私の個室の3部屋。そして馬が8頭」
フィジが伝えてきた枚数の銀貨をシミリートが支払いに行く。
「あ、宿代についてくるのは朝食だけで、夕食は私がおすすめのところに連れて行くからね」
確かにギアマからの通訳でも聞いていた通りだが、フィジが何を食べさせたいと思っているのかは分からない。
フィジは荷物を部屋に置いてくるが、大きな荷物は魔法の収納袋に入れてあるユリアンネ達は戦馬達だけを宿屋に預けて、フィジの案内のもと、夕食のために再びソウムの街に出かける。