ハンソクへの入国3
仲間達の不安をよそに、明るい感じで検査から帰って来たフィジ。
「何も悪いことしていないから不安になる必要なんてないのよ。それに、こういう検査をしっかりしてくれる人がいるから私たちは安心して暮らせるのだから」
「ま、まぁそうだよな」
シミリートの本業が衛兵であることはフィジに伝えていないが、なんとなくその発言に感謝する。
フィジが出国・入国検査に連れていかれ、しばらく待たされる問題は発生したが、結果としてはそのまま通過できてハンソク王国に入国できた一行。
「じゃあ、最初の街はソウムね。まだハンソク料理を食べていないでしょう?おすすめを教えてあげるわよ」
辛い検査があったはずなのに、変わらず陽気なフィジ。
「お、どんなものが売りなんだ?」
「やっぱり一番は焼肉ね。でも値段も高いから頻繁に行けるものではないわね」
「でも、せっかくなら味見してみたいな」
「そぉ?それと、やはりアレね。これは実際に食べて貰うまでは内緒にしておくわ」
「何だよ、それ」
料理に関してはヨルクとジーモントが食いついてくるのを知ったフィジは、彼らをうまく操る方法が分かった、という感じである。
当然にゾフィとカミラはあまり良い気分ではない。
「あんまりうちの男達で遊ばないでよ。振り落とすわよ」
戦馬で2人乗りしているカミラが、後ろに座るフィジに念押しをする。
「はい、はい。つまりあなたの恋人はどちらかということね」
「ち、違うわよ」
「なるほど。あなた達のぎこちなさ、まだ彼氏彼女未満だったのね」
「だったら何よ」
「はい、はい。変なことはしませんよ。落とされたくないからね」
年上なのは少しだけのはずが、大人と子供の会話のようである。