ハンソクへの入国2
街道を進み、国境にあった衛兵達が待ち構えている小屋に近づく。
国境線と思われる簡易な塀が見える範囲には続いているが、とても国境の全てに続いているとは思えない。
「で、7人の冒険者達は分かった。西方に帰るのだと。まぁ見た目にも分かるからな。で、1人は中つ国の人間だが、その仲間になっていると」
「はい、その通りです」
「で、そのもう1人の冒険者でもない女は何だ?」
「ですので、通訳です。ハンソク王国の出身だと彼女が言いますので、王国を通過する間は雇おうかと」
「女1人で怪しすぎだろう。中つ国に対する密偵だった可能性もある。少し時間を貰おうか」
衛兵にも女性がいるようで、その女性に連れられて、フィジは自身の背負い袋と共に奥に消えて行く。
「やっぱりそう疑われるわよね」
「大丈夫かな、彼女」
「ま、本物の密偵だったとしても、すぐに見つかるようなものを持っていないだろうし、密偵でなかったならその通りで安心だし」
「もしも密偵だった証拠が見つかると俺たちもやばいかな」
「北上して来た場所ごとの冒険者ギルドでの証言も集めて貰って、昨日の飲食店での人たちにも証言をお願いすれば、身の潔白は示せると思うけれど、時間がかかりそうね」
「シミ、本業のあなたならどうする?」
「その証拠集めをしてくると言われても、逃げないように、証拠が揃うまでは拘束する……」
「でしょうね……」
フィジが戻ってくるまでの間、だんだん不安になるような会話しかできていない。
次第に無口になっていく7人。
そして静まり返った待機場所に、明るい顔をしたフィジが戻ってくる。
「いくら女性同士だからって、全てを脱がしてあんなに確認しなくても良いじゃないの。本当、失礼しちゃうわ」
心配していたシミリート達は、その明るい発言に対して呆れるしかない。