ハンソクへの入国
「いや、確かに荷物の量などの確認はしなかったよな」
風花の中つ国の北端の街アキハラ。その北門で待ち合わせをしていた通訳として頼むつもりのフィジは、大きな背負い袋だけを持って立っていた。
「馬は無いのか?」
「あら、女1人で何とか生きている状態で、そんな贅沢なものがあると思った?」
「確認しなかった俺たちも悪かった。で、馬がいれば、乗れるのか?」
「普通の女性が乗れると思う?」
「……誰か2人乗りしてやって貰えるか?」
シミリートが女性陣の顔を見て質問をする。
ユリアンネとドロテアは馬上からでも魔法を使う、ゾフィは同様に弓矢を使うことを踏まえると、基本は近接武器であるショートソードなどを使うカミラが手をあげる。
「私の後ろに乗れば良いわ」
「あら、ありがとう。たくましい男性のどなたかにお願いするのでも良かったのだけど」
「そういうことばかり言うから、前の仲間達が喧嘩別れして捨てられたのでしょう?」
「まぁ。手厳しいわね」
冒険者ギルドでもときどき噂になる“パーティークラッシャー”とはこういう人物なのかと昨夜に宿で話し合っていた女性陣。
「流石にあの男達も手玉に取られるほど子供では無いわよね」
「いや、サンダー以外は女慣れしていないし、分からないわよ」
「サンダーって慣れていそう?」
「さっき、私たちのテーブルに来たフィジに早々に、あなたも魅力的と返していたわよね」
「確かに」
そのことを思い出しながら、カミラはフィジに念を押しておく。
「うちの男達に手を出したら許さないからね」
「あら、あなたの男はどの人なのかしら」
「はぁ……」
「冗談よ、もぉ」