フィジ3
正直、シミリートの質問の仕方が悪く、それに乗っかって故郷の場所の返事をして来た可能性があると思うユリアンネたち。
しかし、冒険者ギルドでも簡単に見つからないと言われた通訳を探すことを考えると、フィジを通訳として雇うことも選択肢であると考える。どうせ他で探しても、その人が信用できるかはギルドを通していないので分からないからである。
「念のために確認するけれど、冒険者登録はしていないの?」
「そんなたくましく見える?この短剣だって単なる護衛用よ」
フィジはサンダーの通訳越しのカミラの質問に応える。確かに腰の短剣を抜くのも危なっかしく見えるが、それすらも演技かと疑えばキリがない。
「じゃあ、みんなも良いな?明朝に北門で集合とさせて貰うぞ」
「ありがとうね。分かったわ」
シミリートの頬に口づけをして、1人で食事をしていたような自席に戻ったと思えば、そのまま支払いをして出口に向かう。最後に振り返ってシミリートに向けてか、投げキッスをしてから出ていく。
「はぁ、なかなか癖の強い女ね」
「どこまで彼女の言葉を信じて良いのか分からないけれど」
「ユリ、ギアマにこっそり通訳させるの、本当にお願いね」
「みんな、疑いすぎだろう?」
「シミが無防備すぎるのよ。普通に怪しいでしょう?」
「カミラの言う通りだと思うぞ」
ジーモント達までシミリートの行動が軽率だったと責めるが、他に通訳を探してもその相手が信用できるか分からないので、結論はそのまま彼女と国境を越えることになった。
「じゃあ、結論は出たし、みんな、両替とお土産などの購入をして宿に戻るわよ」
シュンとしているシミリートの代わりに、カミラがその場の解散を宣言する。