フィジ
風花の中つ国の最後の街、アキハラで宿を確保した後、冒険者ギルドに立ち寄る一行。
「やはり冒険者として受けられるような護衛依頼などはなさそうだな」
「残念ね。行商の人ならば、中つ国とハンソクの両方の言葉も話せると思ったのに」
「専属の護衛が居るのかもな。仕方ない。通訳の人だけを探すか」
しかし、冒険者ギルドで通訳の依頼を出そうとしても、過去にそれほど事例がなくすぐに見つかるか分からないと言われてしまう。
「仕方ないから、とりあえず食事に行こうぜ」
「そうだな。最後の街で、美味いものを食べるとするか」
ヨルクだけでなくジーモントもそちらに賛同しているので、心の中でこっそり2人を応援しているユリアンネ。
その応援が効いたのか、ヨルクが選んだ料理屋は当たりであった。
「美味いな、この店!」
ご飯は粒が立っており、焼き魚は塩加減が絶妙で、煮込み料理も型崩れはしていないが口の中でほぐれる程良いかたさである。
ジーモントも一つ一つに納得しながら味や調理方法を推測している。
「あんた達、珍しいわね。この国の人でもなさそうなのに、ここの料理が分かるなんて」
話しかけて来たのは、二十代半ばくらいの色気のある女性であった。
「いや、1人だけは中つ国かい?お、なかなかの美人揃いだね」
「いやいや、あなたの魅力もなかなかですよ」
中つ国の言葉であったので、サンダーが少し年上に見える女性に対して愛想良く返事を返す。
「旅の途中なのかい?これからハンソク王国?それともあちらから来たところ?」
少しお酒も飲んだ感じで、それもあり頬がほんのり赤く余計に色気が増しているのだろう。
「いや、俺たちはこれからハンソクに向かうところだ」
「シミ!」
小さい声でとがめたつもりのユリアンネに気づいたようで、わざとシミリートにもたれかかってくる。
「あなた、なかなか頼もしそうね。私を一緒に連れて行かない?」




