古書交換会2
少し休んで疲労感も治まったところで、ユリアンネは古書交換会の会場を見てまわることにした。大広間の中にいくつもの露店が並んでいる出店形式である。
挨拶まわりのついでになんとなく視界に入っていた魔導書らしき物を見に戻る。
「えーとあんたはオトマンさんところの……」
「はい、ユリアンネです。こちら拝見してもよろしいですか?」
「おぉ賑やかしでも可愛い子は歓迎だよ。こんな年寄りが多い業界だから」
「まぁありがとうございます」
適当なお愛想は返しておきながら、気持ちは魔導書にいっている。パラパラとめくると初級風魔法のようである。
「こちらいただけますか?」
「おっ、読めるのかい?若いのにすごいじゃないか。魔導書は滅多にまわって来ないが、もし見かけたら“オトマン書肆”さんに声かけするようにするよ」
「ありがとうございます!」
同様のやり取りをもう一つ目をつけていた魔導書のところでも行い、休憩所のオトマンのところに戻る。
「やっぱりその魔導書たちを買って来たね。それにちゃんと店主たちに顔を覚えて貰えた感じだね。お互いにどの書店は何が得意か、何に興味を持っているかを知るのもこの交換会の有意義なところなんだよ」
「はい、お二人とも魔導書の話があれば声かけしてくださるとのことでした」
「あぁ、良いことだ。で、何を買えたのかな」
「はい、初級風魔法の≪そよ風≫≪集音≫、初級水魔法の≪洗浄≫です」
「また売りに出す前に写本を作っての習得、頑張ってね」
今度はしっかりと会場を一周して、魔導書の出品が無いことを再確認しつつ、自分が得意で注釈もつけることができる数学、生物学などの本も合計で数冊購入して来た。
最初のオトマンと一緒の挨拶まわり、その後の目星をつけていた魔導書2冊のときと違って、ゆっくりと一人で見て歩いていることから、ナンパのような声かけが何度もあった。同じ業界の相手であろうと思って揉め事にならないような対応をしたのもあり、この周回が一番疲労を感じ、購入した書籍を持ってオトマンの居る休憩所に戻った後はなかなか席を立てずに、オトマンが内心ちょっと早かったかなと反省してしまうのであった。