古書交換会
麻薬騒動で気持ちが落ち込んでいるユリアンネを見たオトマンが気分転換を進めてくる。
「古書交換会というのがあってね。お互いのお店で売れ残っているもの、主に取り扱っている分野とは異なるものを交換する古書店の集まりだね。ユリちゃんもそろそろこれに一緒に行かないかなと」
古書を売ってくれるのは購入した本人とは限らず、遺族が遺品としてまとめて売りに来ることもある。そういう場合には特に古書店ごとの専門に限らず持ち込んでくるので、日頃扱わない分野の在庫を抱えることになる。
それを業界の中でお互いに交換する、早い話が古書店だけが参加できる古書市である。
「うちはそこまで何かの専門書店というほど分野を決めていなかったのだけどね。ユリちゃんの注釈のおかげで、数学や生物学の人気が出てきて。それに魔導書はたくさん仕入れた方がユリちゃんも嬉しいでしょう?」
「気を使って頂きありがとうございます!」
「でね、一つ相談が……」
ある意味、オトマンの後継者として業界団体への顔見せでもあるので、いつものようにフードとマスクというわけにはいかない。
ユリアンネとしても、薬師の業界の方で父姉に話が伝わることを避けていた理由には当たらないのと、オトマンの意図は理解できるので、今回は素顔を出して参加することになった。
「オトマンさん、この綺麗な子は誰だい?」
「うちの後継のユリアンネだ。どうぞよろしく頼むね」
「ユリアンネと申します。お見知りおきください」
オトマンに従って色々な人へ挨拶まわりをすることで疲れてしまったユリアンネ。二人して休憩所で座り込む。
「疲れたよね、ごめんね。でもこれで大体の人に挨拶できたから、自由に見ておいで。腰も疲れたし座って待っているね」