龍神2
「え?どういうこと?お宝を取られたのよ」
カミラがストーム達にくってかかる。
「え?龍神様が望まれたものを提供できたのですよ?」
サンダーの返事にカミラは納得ができない。
「サンダー達はあの龍を龍神様と思っているのよね?自分達の信仰相手だと」
「えぇもちろんです。あのお姿は間違えようがありません」
確かに龍神の彫刻をそのまま大きくした感じであった。彫刻は珠が大きかったので、それを掴む爪を大きくデフォルメされていたが、その違和感はなかった。
というか、現れた龍は宝珠を握ってはいなかった。
「カミラ、仕方ないわよ。私たちには彼らの信仰のことに口出しはできないでしょう?」
「せっかくの素晴らしい彫刻だったのに。何かの魔道具だったのだろうし」
「それのかわりのものはツキノハラに戻れば提供させて頂きますので。オーガ村の殲滅のお礼と合わせて」
「いや、そうではないのだけど。いや、そうなの?それならば……」
「カミラ!」
まぁカミラの気持ちも分からないでもない。確かに鑑定の結果は聞いてみたかったユリアンネ。しかし、あの龍とはどうやっても勝てない力の差を感じていたので、自分達が何の怪我もしないまま、去ってくれたことにホッとしているのも事実である。
「ワイバーンも消えたし、じゃあ西に進むとするか」
シミリートが空気を読んだのか、読まないふりをしたのか声をかけてくる。
龍神の彫刻を梱包していた布を畳んで、魔法の袋に収納しようとしたサンダーが、あ!と呟く。
「あの箱を差し上げるのを忘れていた」
「サンダー、龍神様も要らないから要求しなかったのでしょう?気にしても仕方ないわよ」
「そうですね……」
神仏への信仰というのは前世でもそこまでの人が身近にいなかったが、まるでアイドルに心を奪われていた友人のようであると思ってしまうユリアンネ。