オーガ村からの帰り道2
「はぁ、また狼の肉か」
「ヨルク、いちいち口に出さない!ジモが調理してくれているのだから」
「ごめん、ジモ……」
「ま、ヨルクの気持ちもわかるけれどな。早くツキノハラに戻って色々なものを食べまくろうか」
オーガ村の殲滅の旅が長くなったこともあり、食事についての不満が溜まっている。しかし、逆にいうとそれ以外の問題はなく野営をしながら帰路を進んでいる一行。
「ここからは、また龍神様の領域です。静かに通り抜けるようにしましょう。繰り返しですが、眷属とは戦わないようにお願いしますね」
サンダーが念押ししてくる。
「ワイバーンとも戦わずに逃げるのは結構大変そうだけれどな」
「シミ、余計なことを言わずに早く行くわよ」
噂をすれば何とやらとなって欲しくないユリアンネは、軽口を注意する。
しかしその想いはかなわず、ワイバーン達の咆哮が聞こえて来る。
「まずいぞ。しかも複数だ」
「急げ。もう見つかったのだろうから、気にせずに走るぞ」
山脈も中程まで来ており、峰と峰の間の谷間のような場所であったので、逃げ場所もない。戦馬も状況を認識しているのか、速歩よりも駈歩に近い速度を出している。
しかし草原や平原のように速度を出せる場所ではないので、思ったほどは進めない。それに11人が、体格の良い戦馬に乗っているため、自分達の集団自体が狭い道では邪魔になっている。
「後方、上空にワイバーンが何体か。なぁ、やっぱり戦っては」
「ダメです!」
シミリートの確認に対してサンダーがダメ出しをして来る。
そうは言っても、命まで捧げるつもりはないとシミリート達は思っているため、最後の最後では抵抗するつもりである。
そんなことを内心で考えていたシミリート達だが、目の前に現れたさらに巨大な影を見て、その気が失せる。
「龍?」