オーガ村長宅2
「シミ!大丈夫?」
消火のための水魔法の後は、すぐにシミリートの背後に近寄り、回復魔法を発動する。
「ユリ、ありがとう。でも危ないから下がって!」
その言葉が終わり切る前に、刀を構えた白髪のオーガが飛び出してくる。ブラックとスカイは、その前の炎を守れなかったこともあり、正面を意識していたので、その突進を両側からの木片で邪魔をする。
「ユリ、下がって!」
再びのシミリートの声で慌てて後退するユリアンネ。その動きを見ることなく、自身の魔槍、≪刺突≫のショートスピアを構えて、白髪のオーガに対峙するシミリート。
「ま、この爺さんが村長っていうところか。まさか、こんな剣士っぽいのに魔法まで発動するなんて、な!」
軽口は言いながら、槍を何度も突き出して攻撃するシミリート。
しかし、その鋭い突きをかわしながら、手にした刀で左右にいるブラックとスカイにも牽制をする余力があるオーガ。
素早いオーガに対して、大きな木片が邪魔になると理解したブラックとスカイはそれを投げ捨てて、腰から自身の刀を抜いて対峙する。
槍を構えたシミリートを含めて3人を相手にしても、少しも怯んだ気配がないオーガ。
背後の村長宅を壁と見ると、正面と左右を囲まれて逃げ場がないのに、逃げることを考えている気配もない。
さらに、シミリートの横から意表をつくように飛び出したサンダーが、素早い動きで突き出した刀すらも危なげなく回避する。
その後、体勢を整えたサンダーを含めると4人が取り囲んでいても、なかなか隙を見出すことができない。
「こいつ、やばいぞ」
完全に前方に注意を集めさせられてしまったところで、後方にいたユリアンネ達に襲いかかる別動隊のオーガ達。
「きゃあ!」