オーガ村長宅
「いよいよ、だな」
「そうですね。戦闘員らしきものは、門番だけでしたから、そこに集まっているのでしょうね」
最後の村長宅らしきところまでたどり着くのにそれほどの時間はかかっていない。
村長宅らしいところでも、塀があるわけではなく、大きな建物があるだけである。
流石にここには残ったオーガが待機していると覚悟して、近寄るのも不安がある。
「仕方ないから、その辺の木片を盾にしますよ」
ブラック、スカイというたくましい体格の2人が今までの家屋っぽいところから手頃な丸太の組み合わせを拾ってくる。
「なんか、俺のバックラーより頼もしいな、それ」
「シミは槍もあるのだから、人のものを羨ましがっても持てないでしょう!」
確かに、ブラック達は刀を腰の鞘に納めて、両手でそれを持ち上げている。
ブラックとスカイが前面に立ち、そのすぐ後ろにシミリートとサンダーがついていく。ユリアンネとドロテア、そしてストームは少し離れたところから魔法の発動の準備をしている。
恐る恐る村長宅に近寄るが、弓矢などの攻撃は無かった。そこで、入口のような場所の木を蹴り込んだシミリート。それが壊れて屋内に入ったところで、叫び声のようなものがいくつも聞こえる。
それと同時に、強引に蹴って体勢を崩したシミリートに対して炎の塊が飛んでくる。
左右は大きな木片を盾にしたブラックとスカイが守ってくれていたが、入口を蹴り飛ばしたシミリートへの正面からの炎の攻撃は防ぐ術が無かった。
「う!」
正面から炎を受けたシミリート。
「シミ!」
炎が近づいたのを後方から見たユリアンネが咄嗟に水魔法の準備を行い、炎を受けたシミリートに大量の水を振り撒いて消火する。