オーガ村への山脈
「だいぶ南の方向なんだな」
悪魔ギアマを封印していた場所よりもさらに南下して進む一行。
いつも道案内をしてくれているサンダーに対してシミリートが声をかける。サンダーの饗応役はドロテアであり、彼女はトリアンのどの男性ともペアでは無いので特に微妙な関係にもならず、気軽に声をかけられるという背景もある。また、サンダーがモンタール王国方面の言葉を覚えてきているのもある。
「そうですね。幸いというべきか。あまりに近いとオーガ達の襲撃の懸念が強くなりますので」
「それもそうか。ところでドラゴン達もそろそろ、なのか?」
「そうですね。龍神様はかなり上の方に棲まれているようで、遭遇事例は大昔の伝承でしか無いのですが、眷属の飛龍の方はそれなりに。そちらはもうそろそろの場所ですね」
今回に同行しているツキノハラの男性陣でもオーガ討伐をした実績があるのはサンダーだけとのこと。
「私の土精霊ではそれほど攻撃力もありませんので、せいぜいミノタウロスの間引きくらいで、オーガにはとても」
「そうなんですね。まぁ確かに、火属性の魔術の方が高威力になりやすいですよね」
ストームまで自分達の単語を習得して来たのと、ユリアンネも風花の中つ国の言葉を習得し始めたので、軽い会話くらいはできるようになっている。ブラックとスカイに比べて、ストームとサンダーは知的なところがある感じの通りであり、それもシミリートにしてみるとモヤモヤ感が出てしまう。
大人気ないと理解はしているので、できるだけサンダーとの会話を続けるシミリート。
「で、本当にワイバーンに遭遇したら逃げるだけなのか?」
「はい。どうしても命の危険がある等で無い限りは。少なくともこちらから戦闘を仕掛けるようなことは、龍神様の眷属に対して絶対にしないようにしてくださいね」
「俺達、別のところでワイバーンの討伐をそれなりにして来たからな……」
「それは伺っていますが、ここでは」