オーガ村の噂
「カミラ、今いいか?」
「あ、ちょっと待ってね。このとんぼ玉って言うのがまたすごくて。大きなビーズみたいで紐を通すものだけど、模様が色々だから。この大きさのガラス玉に柄をつけるのだけど、国によって違ったりするのよ」
カミラがさらに、饗応役のブラック・シャドウに土産になりそうな細工物を教わっているのが、あまり面白くないジーモント。
「で、ちょっと良いか?」
「何よ。はい、はい」
「お、みんな集まったな」
シミリートが皆を集めるように声をかけていたようである。
「この前のミノタウロスのダンジョンを踏破したことを踏まえて、ちょっと相談を貰っているんだ」
「また魔物退治?ダンジョン?」
「あぁ、魔物退治ではあるがダンジョンではなく村らしい。それもBランク魔物のオーガだ」
「え?今まで見たこともないけれど」
「あぁ、トリアンダンジョンだけでなくモンタール王国の方でも滅多に聞かない魔物だよな。でも、この風花の中つ国にはそれなりにいるらしい」
ゴブリン、オークなどと同じように人型の魔物であり、見た目では首から上も人間に近い。額の左右のこめかみあたりから角が生えており、“鬼”や“鬼人”とも言われる腕力も強い魔物との話である。
「そんなオーガの話はここに来ても聞いていなかったよな」
「ミノタウロスのダンジョンにも怪我をせずに行けるようになった強者だけが、そのオーガ村の近くに行って腕試しをするらしいぞ。倒した証明として角と魔石を持ち帰るのだが、やはり返り討ちにあって戻らない者もいるらしい」
「ミノタウロスのCランクと違って、Bランクだからな……」
「そう。だからオーガ村の間引きも十分ではないそうだ。悪魔を封印していたダンジョンの方の間引きもする必要があったから、仕方ないよな」