技術交流再び2
「あら皆さん、そういうものに興味あります?では、こんなのはいかがですか?」
戦闘に一緒に行けないので、あまり絡む機会の少なかった饗応役の女性達も話に混ざって来る。
ヨルクの饗応役のスター・ウィンドが持って来たのは、木で出来た小箱である。
「色々な色の木片が幾何学的に組み合わさって綺麗なのは見てわかるけれど、これが何?」
「少しお待ちください」
後ろを向いた彼女が何かしたところ、蓋が開いて空洞の中を見せてくる。
「え!?」
「何これ!」
ヨルクへの接近を警戒しているゾフィもすっかり驚かされてしまい、食いついてくる。
「これはですね」
スターが、元に戻した状態から、ある面を少しずらしてさらに違う面をずらして、という動作を教えていく。
『あ!』
ユリアンネは前世での、“箱根寄木細工”、“秘密箱”という単語を思い出す。
「数手だけでなく20手以上もの複雑なものがあるのですよ」
「この組み木の模様だけでも売り物になりそうだけれど、こんな細工がされていたら。壊さないと中身を取り出せないけれど、壊す際に中のものにまで傷つける心配があるから。良いわね、これ」
「職人技ですので、簡単に習得はできないと思いますが、仕組みさえ分かればお国に戻られた後でも何とかできるのではないかと」
「カミラ、なかなか良いお土産が出来たわね」
鼈甲、七宝、蒔絵などの高級品も購入してはいるが、輸出入は都度となり販売すると終わってしまう物のため、トリアンに戻っても生産できる物はありがたい。
刀装具の細工、翡翠などの工芸品も細工技術ごと必要になるため永続性がなかった。根付などの細工物で、故事や有名な物語を現す文化は持ち帰ることはできるが、他人にも簡単に真似されてしまう恐れがあった。
カミラが両親に自慢できるものが見つかったと安堵している。