技術交流再び
「カミラさん、みんながあれについて教えて欲しいと言っているのですが」
お礼に対するお礼のやり取りの続きで、まだ技術交流の対象になっていなかったものについてフェザーが相談してくる。
「え?このレース編み?確かにこの風花の中つ国では見ないわね」
糸そのものはもちろんこのツキノハラにもあるので、道具としてのかぎ針があれば発展させることは可能と思われる。手先が器用な人も多いので、独自の発展もしていけるだろう。
「ヨルク、このかぎ針と同じものをいくつか作ってあげて」
カミラとゾフィがヨルクに話をし、ヨルクがここの鍛冶屋とともにかぎ針を作り上げる。
「なるほど、これだけツルツルに滑らかにするから、編み易いんだな。これだけ細い針にするならば、竹や木よりも金属で作った方が丈夫だし折れずにトゲも出ずに済むな」
ヨルクと一緒に作り上げたツキノハラの鍛冶屋も何かを納得したようである。
「これは色々な使い道がありそうだな。よし、これのお礼に良いものを教えてやろう」
ヨルクが教わったのは南京錠とは少し仕組みが違うものである。ユリアンネが前世でもそちら方面の知識があれば“和錠”“からくり錠”と呼ばれるものであることと認知できたかもしれない。
ヨルク自身は元々の南京錠の仕組みも知らなかったので、まずはそれを教わり、その次に和錠を教わる。
「こうやって、板バネを鍵で挟んで開閉できるようにするんだ。それにこれみたいに鍵の差し込み口を分からなくさせる方法もあるんだ」
「鍵って引っ張って動かす方法もあるんだな」
「ほら、これなんて鍵が複数必要なんだぞ」
色々と教わって戻ってきたヨルクの説明を聞くと、まるで知恵の輪のようになっているものもある。
「これは帰国した後でも売れるかもしれないわね」
カミラとゾフィの方が前のめりになり、それほど興味が無さそうであったヨルクがその勢いに負けている。