オークダンジョン3
「ねぇ、せっかくダンジョンを探索しているのに、宝箱の一つも見つからないわね」
「階段もないし、本当、単なる洞窟にオークばかりがいる感じね」
サンダーは答えを知っているのかもしれないが、聞いてしまうと楽しみが減るので、仲間達だけでの会話にとどめている。
少し広い場所での食事休憩では、狩ったばかりのオークの肉を焼いて塩だけで味付けしたシンプルなおかずに、集落で作って貰って来たおにぎりを食べている仲間達。
「このおにぎり、本当に美味しいわよね」
「お米を炊いて塩で味付けただけなのに」
ユリアンネとしては、前世のイメージで海苔も巻いて欲しかったのだが、海が遠いからかそれほど普及していないようで、単なる塩むすびである。それでも、上等な豚肉のようなオーク肉との組み合わせは、ダンジョン探索中の食事として上等なものである。
「ご飯も食べたし、続きを頑張るわよ」
「もう少しでコツもつかめそうな気もするし、な」
カミラやヨルク達も張り切って探索を再開するが、すぐに最奥にたどり着いたようで、少しだけ強いオークファイター達を倒した後に小さなダンジョンコアを発見する。
「えー、これでおしまいなの!?」
「確かにサンダーさんは日帰り程度の規模とおっしゃっていたし……」
「せめて帰り道は、通って来なかった別の道を探しながら、ね」
ユリアンネの作成している地図を見ながら、漏れがないように隅々まで探索してオークを狩りつくす仲間達。
「すっかり暗くなってしまったようね」
探索を終えて洞窟の外に出たときには既に夜であった。
「単に奥まで行って帰るだけより時間をかけて探索したからね」
「はい、こんな精度の高い地図は今までありませんでした」
サンダーがユリアンネの地図を欲しそうにしているので、集落に提供することにする。