忍び
ユリアンネとドロテアが精霊魔法の練習を行っている頃、シミリート達は投擲の練習を行っていた。
「そうなんだよ。忍びっていう、陰に隠れながら仕事をする人達がいるんだって。貴族などの建物に忍び込んで極秘資料を取ってくるとか、その地方の住民の意向などを調べたりするらしい。で、夜の闇に紛れるために黒い衣装をしたり、暗器っていう隠し持った武器で戦ったり」
夕食時に、その話をするシミリートやジーモントは子供のようである。
「忍者?」
「そう、そういう言い方もあるらしい。草、乱破、隠密とか」
前世イメージの通りの忍者、忍びならば本当の諸々は教えて貰えないだろうと思ってしまうユリアンネ。
「で、手裏剣っていういろんな形の武器を投げることもあるらしいんだけど、俺達はそんな武器を手に入れてもメンテナンスもできないだろう?」
「まぁ研ぐぐらいならしてやるがな」
「ヨルクはそう言ってくれるけれど、現実的には、な。だから、俺が最近投げることが多くなった≪頑丈≫のダガーとか、カミラも投擲用の≪穿孔≫のダガーとかあるじゃないか。で、ダガーやナイフの投擲を教わることにしたんだ」
自分の中にあった忍者のイメージの十字手裏剣の投擲などではないのかと思いつつ、確かに中距離用の物理攻撃手段を皆が持てるのはありがたい。
ダガーやナイフならば、この風花の中つ国を出た後もすぐに入手できるものであり、実際に投擲に使用している者も多いので違和感を他人に持たれることもないはずである。
「じゃあ、シミやカミラだけでなくみんなも?」
「私は弓矢があるけれど、一応ね」
ゾフィがヨルクを、カミラがジーモントをそれぞれ誘って投擲練習に行っているようである。