ツキノハラでの修行
“選ばれた盟友”の7人はそれからもそれぞれの分野で、“風花の中つ国”の技術習得をしながら、自分達の技術の伝達も行っている。
「金のことをこがね、銀のことをしろがね、銅のことをあかがね、鉄のことをくろがね、錫のことをあおがねって言うんだぞ。オシャレじゃないか」
「あらヨルク、私もそれぐらいは覚えたわよ。さらにこの翡翠って、細工にも向いているし、刀装具にも使うらしいから覚えた方が良いわよ」
ヨルクとカミラがそれぞれ得た言葉などを自慢しあっているように、皆も中つ国の言葉を少しは覚えて来ている。
「ユリはだいぶ薬のことを覚えられた?」
「そうね、丹薬は中級になったし、塗薬も色々と覚えたわ。あっちではポーションなどの飲み薬以外はあまり普及していないから、使い分けると良いかも。残念なのはこちらとあちらでは薬草の植生が違うからそのままは使えないことね」
「それは料理も一緒だな。竹っていう木を使った料理、あっちではなかなか同じようなことはできないな。こっちで仕入れた食材を大事に使うか、高価な輸入品を使うか……」
「刀も、だな。こっちの砂鉄を元にして作った玉鋼を使わないと本当の刀はできないことがわかった。研ぐことくらいはできても、あっちで刀を使い続けるのは難しいな」
カミラが諦めた漆、ゾフィが諦めた紙のように、単純に技を覚えて帰っても何とかできないことが多いことに改めて気づく。
「交易の再開が必須ね。私達は職人に近い方だから、そういう商人に期待するしか方法はないわね」
「あの海賊が居着いていた島の再興も必要ね」