ツキノハラへ2
「皆さん、森が見えましたね。私達のツキノハラももう少しです」
草原続きだったが、街道からも離れて2日ほど。奥の方に森が見えてくる。さらにその森の向こうにはかなり高い山脈が見えてくる。
「あの山脈の麓に近い森の中に俺達の故郷がある」
「道はあるのか?」
「整備された道を想定しているならば、そこまでは期待するな」
フェザーやシャドウがもう少しと言った森に入ると、確かに獣道というほど酷くはない程度の道が続く。
「こんなに熊や狼が襲ってくる森なら、他の集落との交流はどうするんだ?」
「腕に自信がある者だけが通行するのが普通だな。それにだいたいは自給自足できるだけ周りが豊かだからな」
「なんだかんだと迷宮都市トリアンや王都シャトニーが生活拠点だったときとだいぶ違いそうだな」
「そうですね。都会も便利ですが、気を使わない私達の故郷も良いものですよ」
その森の中で、少しだけ広い場所を野営場所にした一行。
オークの集団による夜襲があったので、少し寝不足気味である。
「まったく。ハイオークの肉が残っているから、オークの肉にありがたみが無いな」
「とは言っても、しっかりお肉が確保できたらから、シャドウ達の実家へのお土産にはなるかな?」
「そうですね。男女問わず狩りができる人は歓迎されますよ。ただ、狩り以外の技能でも何かに秀でている人は感謝されます。皆さんは私達の使命をお助け頂いた方々ですので、そもそも大歓迎ですよ」
「この地方の料理を教われたらありがたいのだけど」
「それは大丈夫ですよ」
「鍛治職人も居るか?」
「もちろんですよ」
それぞれが自分の技術習得に期待を膨らませている。ユリアンネも丹薬など異なった技術の習得が楽しみである。