港街シオサキでの宿泊2
やはり日本刀もこの世界にはあったのかと思いながら、ヨルクの購入して来た短刀の刀身の綺麗さを眺めるユリアンネ。
鞘も凝った物ではなく単なる白い木で作られたものであり、まさに“ドス”のイメージのものであったが、この港街シオサキについてからは日本的なものを色々と見て懐かしんでしまう。
「ユリにも分かるだろう?この良さが」
慌てて≪簡易鑑定≫で確認しても、確かに高級中位の品であり、その旨をヨルクに伝える。
「これは刀だから手入れが大変ですよ。すぐに刃が痛みますし」
「そう、だから俺も旅をする間は手入れが楽な山刀にしたんだ」
シャドウが自分の山刀を見せてくる。
「刀は切れ味が良いのですが、刃が繊細で。叩きつけて切るような使い方をする兄には……。この国ならば刀鍛冶もちゃんといるのですが、他国に行くならば、と」
「買い物自慢は食べてからにしようか」
ジーモントがこの国の夕食を待ちかねているようで、いつもならばヨルクが発言するような言葉を言ってくる。
「で、これが刺身なのね。本当に焼いたり茹でたりしないのね」
「海が近くで新鮮だからできることね」
「この醤油につけるとますます美味しくなるんですよ」
「でも生の魚なんて食べてお腹を壊さないかな?」
「何を言っているのよ。うちには船酔いですら薬や魔法で治せるユリがいるのよ」
「それもそうだな。せっかく違う国に来たのだから、その国のものを楽しまないと」
船の長旅だからと養父ラルフに船酔いの薬の調合を習っていたのだが、早々に使い切ってしまい中級回復魔法≪軽病治療≫を使っていたのである。
船酔いは体内の水分代謝が上手くいっていないからと考えられるので、利尿作用のあるタクシャ、チョレイ、ブクリョウなどを調合するものであった。この国は植生が違うようなので、同じ素材が入手できるだろうか。