中継島の賊
「ユリ、アーロルフ達の方が危なそうだ」
「そうね、船にもっと攻めて来ると思ったのに」
船に辿り着く前にアーロルフ達との戦闘に入ってしまったようで、そちらへの増援が必要そうである。
桟橋から船に攻撃して来ようとしていた賊達は早々に撃退した上で、シミリート達が走っていく。
それより一歩先にシャドウの従えている鷹のフィアと、ユリアンネのシルヴィスは応援にまわしてある。
船の方の手がすいたときに、賊の中でも指図をしている男達の1人の背中にシルヴィスを突っ込ませて倒している。
「あいつらの拠点にはここにあった食料があるかもよ」
「カミラ、そんな当てずっぽう、いくら俺でも信じないぞ」
ヨルクは口ではそう言いつつも、ドワーフの短い足で走るのが速くなったように見える。
戦闘が始まった頃には賊の方が人数が多く、建物に隠れていたアーロルフ達の方が少数で劣勢であったが、シミリート達が隠していた戦馬で駆けつけると形勢が逆転する。
駆けつけた後に乗り降りた戦馬に自由に戦わせるとCランク魔物の実力も発揮して、賊を蹴り上げて倒していく。もしくは馬の体当たりに押し負けて体勢を崩した賊が、冒険者に倒されているようである。
「やばいぞ。逃げろ!」
賊の誰かが叫んで逃げ腰になったところでますます冒険者達の方が勢いをつけていく。
「逃すか!」
数でも優勢になったアーロルフ達が囲い込もうとするのと、フェザー達の矢やユリアンネの操るシルヴィスが抜け漏れた賊を確実に足止めして行く。
「今夜のところは、深追いはやめておこう。事前に教えてくれたおかげで迎撃ができた。感謝する」
冒険者達が生き残っている賊を縛り上げるのと、ユリアンネとドロテアが回復魔法を冒険者達に行っているときに、余裕ができたアーロルフがシミリートに感謝している。