海の魔物氾濫疑惑3
「アーロルフ!こんなのもいつものことか!?」
シミリートが≪刺突≫のショートスピアを近くのタコの足に突き刺しながら、護衛冒険者のリーダーに叫ぶ。
「こんなの、初めてだ!こいつは巨大蛸だろう。Aランクだ、気をつけろ!」
アーロルフやその部下達も手にした剣で斬りつけているが効果があるのかわからない。それどころか、くねくねした足を振り回して甲板にいる冒険者達をなぎ倒して行く。
「ユリ、どうにかならないか!?」
「火を使うわよ!」
「船を燃やさないでくれよ!」
アーロルフからの当たり前の返事は聞き流しつつ、船の外側になる、少しでも足の付け根に近い場所を狙って≪炎槍≫を発動する。
王級魔法の威力だけあったからか、そこでその足を焼き切ったようで、それより先の足が甲板にちぎれて落ちる。
「流石、ユリ!」
次の発動に向けて狙いをつけようとするが、顔を出していない割に状況がわかっているのか、いくつもの足を振りまわしはじめる。船に火魔法を当てるわけにいかないので、狙いがつけられない。
≪氷壁≫
土や石の壁だと向こうが見えないので、引き続き≪氷壁≫を活用して、その振りまわす足から自分達の身を守れる場所を作る。
「あいつ、狭いところを狙う器用さはないみたいだから、壁には隙間を作ってくれ。そこから攻撃を続ける」
シミリートの要望通りに、隙間を開けながらいくつかの≪氷壁≫を作るが、巨大な足の攻撃で潰されるものも出てくる。
ユリアンネが1人ならば単なるいたちごっこになりかねないが、シミリート達や船の護衛冒険者達もいるので、クラーケンの足の傷が増えていく。