海の魔物氾濫疑惑2
魔物によく遭遇することから海での魔物氾濫を疑ったが、実被害は最初の“飛魚”のときだけであった。
その後も何度か“飛魚”に遭遇するが、最初から≪氷壁≫を上手く活用することで怪我人を発生させることもなく無事に乗り切ることができている。
「船長からも、乗客に魔物退治をさせていることへの謝罪があったわね。船を降りるときに清算してくれるって」
「高い船賃への足しになるかしら」
「いや、このペースだと護衛代の方が高くなるかもな」
軽口を叩けるくらいには気楽に船旅を続けられていたある夜。
「なんだ、急に揺れ出したぞ!」
「嵐か?でも、窓の外も雨は降っていないみたいだぞ」
「うぉ!なんだ、この揺れは。とりあえず甲板に行ってみる」
男性部屋からは最近のお決まりになった、盾のあるシミリートとジーモントだけが飛び出してくる。
同じように女性部屋からはユリアンネとドロテアが甲板に向かう。
「ユリ、灯りを」
先に着いていたシミリートが、視界の確保のために光魔法の発動を要望する。
≪照明≫
中級になり≪灯り≫より広範囲を照らせるようになった光魔法を発動したユリアンネは、船にまとわりついているものの正体を知ってしまう。
「なんだ、こいつら」
「シミ、こいつら、ではなく1体の巨大な蛸だと思うわ」
巨大な吸盤が並んでついている足が何本も船に巻き付いているのであった。
港街があるといっても、前世の日本人のようにはタコを食べなれていない文化圏であることを思い出す。確かに、前世でも西洋人はタコを食べないと聞いた記憶がある。