海の魔物氾濫疑惑
せっかくヨルクが“飛魚”を食べられるかの方に話題を変えたのだが、効果がなかったのか、カミラの心配のように魔物との遭遇が続く。
『飛魚の次はサメか……』
前世の図鑑のような書物やテレビやインターネットでの動画等が普及していないこの世界では、船乗りでもない限り知ることがない海の生物達。
「あいつ、なかなか大きな口で歯もすごいが、海面から甲板まで距離があるから助かったな」
「こんな奴がいる海で泳いだり落ちたりしたら……」
「ボートみたいな小さな船だとやばそうだな」
念のためにアーロルフに呼ばれた“選ばれた盟友”達だが、甲板から見下ろすだけで済んでいる。
「矢を放っても取り返せないし、船に危害が無いなら魔法攻撃も魔力消費が勿体ないよな」
「槍にロープをつけたような銛は無いのかしら?」
「お、魔法使いのお嬢さんは流石に物知りだね。あぁ、幾つも装備しているぞ。でも、シミリートが言うように、放置すれば良い魔物に使うことはやめておこう。変に怒らせて、船に傷でもつけられると損するからな」
「へぇ、そんなのがあるんだ。海だけでなく、陸でもそんなロープが付いていると回収が楽そうだよな」
「シミ……簡単に切れない丈夫なロープは重いわよ。陸ならば投げたものを拾いに行く方が現実的だから普及していないのよ」
「ははは。嬢ちゃんの言う通りだな。海ではせっかく倒しても沈んで行ったり、傷つくと逃げたりする魚を引き上げたり引き寄せたりするためだからな」
拗ねたような感じのシミリート。
「じゃあ、投げても手元に戻ってくる魔法の槍なんてあったら便利だと思わないか?」
「そうね。そういう矢や槍はあると聞いたことがあるわ」
「よし、そう言う魔道具を探すことにしよう」
変な方向で機嫌は戻ったようである。