海の魔物2
「こんなのに噛まれたら大変ね。まずは盾の代わりに」
大きな飛魚のような魔物に襲われている甲板に出たユリアンネは、≪氷壁≫を進行方向に対して斜めに発動し、透ける壁の向こう側を見ながら体勢を整える。
「護衛の人達も盾を使って避けているのね」
“飛魚”は左舷から右舷に向けて船を飛び越す中で、ちょうど良い人物がいれば噛み付いて来る感じである。
それなりに知能があるのか、船の構造物にぶつかってのたうちまわるものは居ないようであったが、≪氷壁≫は想定外だったのかぶつかって甲板に落ちているもの達は居る。
「ユリ、先に行くなよ。大丈夫か?」
「シミ。これは盾が無いと出て行くのは大変そうよ」
「確かに。ヨルクとカミラは邪魔にならないように船室に戻って待機を。ゾフィは甲板で人に噛み付いている奴を射られるようならば頼む。難しそうならば同じく船室に」
「外して誰かに当たったら大変だし、護衛でない私達は邪魔にならないように戻っておくわ」
「ユリとテアは魔法を頼む。ジモと俺は、盾で身を守りながら、≪氷壁≫で落ちた奴にトドメを刺して行こうか」
「援軍、助かる!こいつら、数が多くて。その壁みたいなのってもっと出せるか?甲板いっぱい出して貰えると助かるんだが」
「了解!」
要請もあったので、甲板に複数の≪氷壁≫を発動する。最初に出したように、アナログ時計でいう7時5分や8時10分のように進行方向に斜めに作る。そうすると≪氷壁≫にぶつかった“飛魚”は斜面に沿って左後ろに流れて行く。
「ユリ、せっかくなら」
「はいはい」
シミリートの言いたいことも分かったので、それぞれカタカナの「レ」のような折り返しを作り、そこに溜めて行く。