乗客として乗船3
「食堂がある船もあるようですが、この規模では部屋に運ばれるだけですね」
船旅の経験者であるフェザーに色々と教わるユリアンネ達。
どうも女性部屋には他の客が追加されることもなく仲間5人だけのようで気が楽である。
「それに食事の内容も、最初はマシですが、陸から離れてしばらく経つと保存食である干し肉や塩がいっぱいの魚が中心です。パンもかたいですしお水の量も限られています」
「ヨルクが怒り出しそうね」
「お金持ちは魔法の収納袋にある物を自分で用意するのでしょうけれど、通常の乗客はそれを我慢します。他に手段がありませんので」
「で、1ヶ月のうちどのくらい陸に寄るの?」
「私達がトリアンに来るときには2回、港街に寄りました。でも、往路と復路で潮の流れが違うようで、これからは途中で島に1回寄るだけらしいですよ」
「あらあら。甲板かどこかで火を使っても良いのかしら?」
「流石に駄目でしょう。船は木製なんだから、キッチン以外の場所で勝手に火を使ったら海に放り出されたりするんじゃないの?」
王都北部でビザリア神聖王国を撃退する戦争のときでも、ジーモントの料理のおかげで干し肉だけのような悲しい食事にならずに済んでいた仲間達。
特に食べ物にうるさいヨルクが我慢できると思えない。
「ユリ、暇なんだけど……」
ヨルクより先に同室のカミラが暇を訴えてくる。ユリアンネは魔法の練習や薬の調合など、魔法の収納袋に入れていたもので色々とすることがある。
「カミラも、その新しく手に入れた武器の手入れなどをすれば良いじゃない」
「船に乗っている間には使う予定のない武器を?ゾフィとフェザーは矢の糸の巻き直しなんてしているけれど」
「そう言わずに、短剣投擲の練習なんて良いんじゃない?揺れる中でも踏ん張る練習にもなるし」
「う……」