21階の過剰戦力2
「やっぱりシミとユリは目立っていたのね」
「トリアンで就職するか?今更だけど」
「いいえ、みんなと一緒に、フェザー達と船に乗って行くわよ」
「俺だって」
「そんなムキにならなくても。冗談だって」
仲間達がオトマンの書店を継げなくなった自分のことを気遣ってくれていることに気づいているが、その気持ちに甘えてそのことには触れないユリアンネ。
「あの騎士団達の邪魔にならないように、あっちの方向に進もうか」
「夜に死霊魔法を練習するにも、人の居ない場所が良いしね」
「なんか、悪の魔法使いって感じ?」
笑ってからかわれるが、ふと気づくと確かにアンデッド集団を操る魔女なんて、注意しないと危険な存在と扱われそうである。
「ねぇ、それよりユリ、この剣へのチャージをお願いできる?」
カミラが≪氷≫のショートソードを使い過ぎたようで、その魔石に対する魔力の注入を頼んでくる。
「はいはい、ちょっと待ってね」
魔道具屋で販売されている灯りの魔道具なども、魔石にチャージするか魔力のある魔石に交換するサービスがある。たまたま仲間に魔力操作ができるユリアンネ達が居るが、通常の魔法使いのいない冒険者パーティーでは魔道具の使用もあまり無制限に出来ないのだと改めて考えさせられる。
そして、ジーモントによるハイオークの肉料理を堪能した夕食の後。
「じゃあ、悪の魔法使いユリアンネによる死霊の舞を」
ユリアンネも悪ノリして、ハイオークの死体を使った死霊魔法の練習を開始する。
五体満足の死体がたくさんあるので、それを使ってBランク魔物であるレイスを生成する王級≪死霊≫魔法を練習する。肉体はなく、魔法の武器や魔法でしか攻撃できない魔物であり、何かの際の切り札にできるはずである。また、一度発動させると死体が消えて、レイスを生み出す魔石だけが残るので、魔法の収納袋の節約にもなるのが地味にありがたい。