秘密基地の混雑3
「そなたたち!」
アナスガー子爵に廊下で顔を見られたフェルバーとニキアス。足を止めたところで、その奥に控えているシミリートとユリアンネにも気づく。
「そうですか、王国魔術師団の手柄ということですか。伯爵にもちゃんと伝えておきますぞ」
このタイミングで余計なことは言えないので、頭を下げるだけの4人。
デレックには秘密基地に残るように指示して、アナスガーたちだけを連れてフスハイム子爵の屋敷に戻ったルオルゾン伯爵。
「で、先ほどの話はどういうことだ?」
「は、あそこにいたのは、王国魔術師団の中隊長、オテロ・フェルバー男爵達です」
「その名前は」
「はい、モンヴァルト山脈を冒険者達と共に越えていった部隊です。横に居た男女は私の妻に成り代わっていた吸血鬼達を倒した冒険者達でもあります。きっと彼らが小山の領主館から領主達を救い出し、解毒も行ったのでしょう」
「そうか、山脈を越える際に魔物が少なかったのも結局は彼らの成果ということか」
「残念ながらそうなるのかと。ただ、トリアンの軍勢を破り、領主館から国王を称した男を追い出したのは伯爵閣下の手柄であることは間違いありません」
「ますます独立派を率いた張本人のインガルズとシャイデンとかいう男爵は、我らの手で捕まえる必要があるな」
「は!」
「フスハイム子爵、衛兵団を含めたこのストローデ領の領軍の指揮を頼めるかな。国家的犯罪人を逃すことは許さん」
「もちろんでございます」
領主の侯爵家を除くとストローデ領に子爵より上位の爵位の者はいないため、非常事態である現状で、独立反対派でありデレックを匿っていたフスハイムが領軍を指揮するのが一番問題ないはずである。