秘密基地の混雑
「シミリートさん、皆さん、申し訳ありません」
ゼバスターが先に馬を走らせて、“選ばれた盟友”の“秘密基地”に駆け込む。
「どういうことですか?先ほど、フスハイム子爵の使いに付いて行ったばかりではないですか」
「そんな!え!」
「もう今更だよな。侯爵家の御当主様がこの基地でお休み頂いているのだし」
「そうよね、隣領の伯爵様がいらしたって、ってワケにいかないわよ。片付けできることはしないと」
「ゾフィ、いまさら焦るなって。どうせ俺達は違う部屋に引っ込んでいることになるのだし」
「ヨルク、またシミとユリに押し付けようと思っているんでしょう」
「そういうカミラもそう思っているんだろう?」
「ま、フェルバーさん達も、ってなれば私達なんて邪魔なだけだしね」
小山の領主館から連れて来たインリート夫妻。寝たきりだったのを解毒で起こしたのは良いが、その後の移動で無理したのか、やはり寝込んでいるインリート。ユリアンネがポーションを飲ませたり回復魔法をかけたりは行っているが、元々が高齢で病床だった相手である。
客間っぽい部屋に夫婦で居てもらい、ユリアンネが治療に、ジーモントが食事を持って訪れるぐらいの関係にしている。
領主館に向かう際の留守をお願いした魔術師団の皆が泊まる部屋はないので、庭で野営する感じになってしまっている。
流石にフェルバーとニキアスを庭に、とはできないので部屋を与えたし、既に嫡男デレックとそのお付きのゼバスターも居着いていたので、シミリート達の男性陣は地下室に居室を移動する羽目になっている。