ルオルゾン領軍3
「それで、独立派をインガルズと共に率いていた男爵の行方は?」
「は、何かと裏の世界と繋がって悪評の高い男でして。今回の騒動で同じく姿を消したとしか情報がありません」
苦しそうに答えるフスハイムの話に、こちらも苦虫を噛み潰したような顔になるルオルゾン伯爵。
「アナスガー、そちらも手配書を用意しろ」
「は」
「似顔絵には協力して貰うぞ、フスハイム子爵」
「もちろんでございます」
フスハイム家の執事が、小さな羊皮紙を差し出してくる。
「侯爵家嫡男のデレック様が来られたようです」
「ここに来て貰おう」
ゼバスターと共に面談場に現れたデレック。
「まさか。いや、確か12歳ぐらいと伺っていたか」
ルオルゾン伯爵は、血統魔法の代償の身長のことを先ほど知ったので驚いたが、年齢相応の身長であると認識する。
「はい、12歳になります。デレック・テンフルト・フォン・ストローデでございます。この度は我が家中の不始末に対して、隣領のルーペルト・バーデ・フォン・ルオルゾン伯爵閣下には多大なるご迷惑をおかけしてお詫びの言葉もございません」
「(ほぉ教育はちゃんとされているようだな)……謝罪すべきは我らだけでなく、領民や王国民、その他の多くが対象でしょうな。まずは当主である父君の居場所をご存知ないですかな?病床とはいえ、まずはインリート殿が責任者となりますので」
「トリアンの街中ですが、少し離れたところに避難させております」
「デレック様!?」
フスハイム子爵も認識しておらず驚いた顔を出してしまう。
「ここまで移動は難しいということですかな?」
「申し訳ありません。小山の上から脱出させる際に無理をさせてしまい」
「ならば、連れて行って貰おう。私達が向かうのであれば問題ないですな?」