領主インリート3
本邸に逃げ込んだ後、地下室にたどり着くまでにはどうしても戦闘を回避できなかった。
マルレーナを背負うのをジーモントに代わってもらったシミリートとマンファンが槍で近衛兵達を相手しながら、フェルバー、ニキアス、ユリアンネが強すぎない中級の≪氷刃≫などの魔法を発動して、戦闘不能にしていく。
地下室から地下道に入ったところで、一息つく。
「ここを≪石壁≫で塞いでいきます。何重にも発動しておきますので、今のうちに先に進んでください」
ユリアンネが魔法を発動しながら、皆へ行動を促すが、デレックから否定される。
「すまない、父上がもう限界だ。いくら背負ったままといっても、疲労が。少し休憩をさせて欲しい」
「いや、デレック、このまま行くのだ。もし何かあればそこまでだったのだと」
「そんな、父上」
「少々お待ちください」
ユリアンネは思いついたことがある。
≪氷壁≫を板のように作成し、冷気が伝わらないようにその上に≪土壁≫を重ねる。さらにその上に、魔法の袋に収納したままになっていたサーベルタイガーの死体を並べると、簡易のベッドのようなソリのような物が完成する。
「こちらにどうぞ」
インリートを横にならせ、その横にマルレーナを座らせる。
滑りすぎても前方にシミリートとジーモントがおり、いざとなったら彼らが食い止めることを前提で、下りになっている地下道を進むのである。
「流石ユリアンネさん、発想が自由ですね。我々王国魔術師団のものにも見習わせないと」
フェルバーとニキアスの会話は聞き流しながら、先に進む。