男爵への追い込み
「フスハイム子爵から謝罪とお詫びが届いているぞ。ユリアンネさんを子爵家のお付きの薬師へとの打診もあったが、おそらく断ると伝えてある」
マンファン分隊長が昼頃にやって来て、シミリートに伝えている。
「え、金貨がこんなに?」
「名無しの方を預けていることも含めてなんじゃないの?」
「そうか。で、ユリ。お付きの薬師にはならないよな?」
「聞かないでよ。当然でしょ」
「一般的には、貴族お抱えの薬師になるって喜ぶものだろうに」
「マンファンさん、薬が欲しいというのならば、父ラルフの“木漏れ日の雫亭”を紹介してあげてくださいね」
「そうですね。わかりました」
「で、分隊長。男爵の方はどうなっているのでしょう?」
「あぁ、男爵の私兵とは言っても、証拠は本人達の言葉だけだからな。奴隷にしたから、何でも指示通りに話せてしまうので証言能力はないし。それのみで男爵を追求はできないが、どんどん男爵の戦力を減らしているのは確かだろう。裏商会も潰して行っているし。今回で魔法使いの手駒も減ったのだし」
「これからも、少しずつ対応するしか方法はないのですかね?」
「いや、名無しの君を預けているこの拠点まで知られて狙われたのだから、このままにしてはおけない」
「では?」
王国魔術師団のフェルバー中隊長とニキアス副官のところに、再びシミリートが使者に遣わされる。
「そうですか、前の屋敷のときのように共同で裏組織の拠点を潰すのですね」
「はい。それで、独立派のNo2である男爵の力を削ぎます」
「承知しました。引き続き冒険者の体で稼がせていただきますか」
「上司に報酬のことを伝えておきますね」
シミリートは笑いながらニキアスの冗談に答える。