デンの散歩3
デンが屋台などの人混みから無事に馬車に戻って来る。
「ご堪能されましたか?」
「あぁ、ドロテアが色々と教えてくれた。あれほど多様な物が売られており、それを様々な者達が買い物に来ておるのだな」
「はい、最近は人数も減っていますが、以前はもっと」
そう言ってしまった後、しまったとユリアンネは失言だと反省する。
デンも流してくれたのか、気づいていないのか、特に反応は無い。
「今日は満足だった」
「良かったですね。ヨルクの両親にも伝えておきますね」
「今度はダンジョンに入りたい」
「それはダメですよ。冒険者登録も必要になりますし」
そこはゼバスターも一緒に否定してくれるので、変な面倒に巻き込まれずに済みそうである。
ヨルクの買い食いにゾフィが付き合い、シミリートが定期連絡で来ているマンファンとセレスランの対応をして静かに過ぎていく夕方。
「今日も食べて行かれますか?」
「いや、今日は家で食べるよ。ジモ君の料理は好きなんだが」
「俺は食べて行っていいかな。今日は拠点に戻って夜当番だし」
「セレスも、家でご飯を一緒に食べる相手を早く見つけないとな」
「分隊長みたいな美人の奥さんはそうそう居ませんよ」
「お、いうな。じゃあかみさんに美人の知り合いを探して貰ってやろう」
買い食いから帰ってきたはずのヨルクが、いつも通りの食事量であること皆が笑いながら賑やかな夕食時間を過ごす。デン達も本人の希望で一緒に食事をすることになっているが、気を遣っていたのは最初の頃だけで、今は普通に談笑しながらの食事会である。
ただ、残念ながらその夜まではいつも通りにならなかった。
「起きているか?」
女子部屋にこっそり来たシミリートに起こされたユリアンネ。
「シミ!何しているの!」
「しっ!馬達の反応がおかしい。皆を起こすんだ」