デンの散歩2
「ゼバスターさん、デン様のお母様って?まさか?」
「ご存命ですよ。お父様の看病をなさっているだけです」
「そうなんだ、良かった」
となると、両親と離れ離れで過ごしている今の状況だが、それを口に出来ないのを我慢しているのがデンの今の反応なのかと受け取る仲間達。
「ねぇ、シミ。今の御領主様達と言えば良いのか、国王を宣言した人の兄の侯爵様夫妻ってどちらにいらっしゃるのかしら」
「多分、インリート様が病に臥せっていらっしゃるのだから小山の領主館だろうね」
「え、そこには国王を名乗る弟達もいるわよね」
「あぁ、あれだけ広ければ、一部分だけが兄家族の場所って簡単にできるんじゃないか」
「でも、そこに嫡男を置いておくには、暗殺などが怖いってことね」
ユリアンネとカミラの話に頷くシミリート。
「じゃあ、そろそろ帰りましょうか」
切りの良いところで声をかけて馬車に皆を案内するシミリート。
ヨルクの実家を出て街の中を進むと、今度は街中の喧騒に興味が移ったのか、街歩きをしたいと言い出すデン。
両親のことで寂しい思いをしたのかもしれないので、気晴らしになるかと思う。ゼバスターの顔を見ても否定をしなかった。
「じゃあ、デン様はこちらのローブをお召しください。顔も隠して」
馬車の中で、少し照れながらユリアンネのローブを羽織って、フードで顔もかなり隠れる感じに。そしてゼバスターとドロテアに両脇を固められて馬車を降りていくデン。
素顔をさらしたことで何か面倒に巻き込まれるのを避けるため、ユリアンネは馬車の中で留守番になる。
ゾフィとヨルクも留守番に残ったことで暇はしない。
「ヨルクが一緒に行くと買い食いばかり見せることになるからね」
「ゾフィ、うるさいぞ。デン様を連れ帰った後に、買い食いに来るぞ」
「はいはい、お付き合いしますよ」
二人の関係性を温かい目で見ているユリアンネ。