暗殺未遂
「シャイデン!よりによって反対派で嫡男デレックを推すフスハイムに情報をつかまれるとはどういうことだ!」
解散された御前会議の後、シャイデン男爵を叱責するインガルズ。
「この後にどうすれば良いか、わかっているよな?」
追い詰められたシャイデンは自分の隠れ屋敷に保管していた麻薬の確認に向かう。
「旦那様、お呼びでしょうか」
「こんなときのためにお前を囲っていたんだ。頼んだぞ」
愛人でもある女暗殺者に麻薬を預ける。
「シミはいよいよ子爵様にも面談の機会ができたのか」
「いや、単にフェルバー様をトリアンの独立反対派に引き合わせるという衛兵団の繋ぎ役をしただけだよ。フェルバー様は男爵様だから、あの方を知っているみんなとそんなに変わらないよ」
「いや、フェルバー様が男爵様というのは知っているけれど、あの丁寧な口調だから。それよりもトリアンのフスハイム子爵だなんて、トリアンに住んでいても顔を拝見することなんて人生で一度もないだろうから」
「俺だって一瞬お顔を拝見しただけで、ずっと頭を下げていたから……」
「なんだ、そんなものか」
「そうだよ」
“秘密基地”でくつろいでいる“選ばれた盟友”。
そこへシミリートの上司のマンファン軍曹が飛び込んでくる。
「ユリアンネさん、急ぎついて来てください!」
「分隊長、何があったんですか?」
「シミ、お前もついて来ていいから、事情説明は後だ。街中で戦馬を飛ばしても良いから。衛兵の制服を着た俺が先導するから」
急ぎであることだけは理解して、ユリアンネとシミリート、そしてドロテアだけが用意をして戦馬にまたがり、制服姿のマンファンの騎乗に従ってトリアンの街をかける。