吸血ダガーの正体3
ダガーに封印された悪魔ベリスが欲しがる魂について、念話でユリアンネに説明する。
この世界の生物、人間や魔物もすべて輪廻転生を繰り返している。その生で経験を積んで存在をより上位のものに変えていくものである。
ここで魂が欲しいというのは、その対象の輪廻転生を無くす、存在を無にするということではなく、その生で得られた経験を吸収するということ。
自分の意思で捧げるのでなければ、殺した相手がしばらくの間は選択権を持っており、今回は誘拐犯のこの世での一生分の経験をベリスが貰ったとなる。
今までも、この≪吸血≫ダガーで傷つけた魔物たちの魂はベリスが吸収して来たが、魔物よりも濃い生を送る人間の方が経験の価値があり、誘拐犯の魂からベリスは多くの力を得られたので、念話ができるようになった。
これらの説明を聞いたときにユリアンネは、前世記憶のゲームのことを思い出す。
ゲーム等で倒した敵から何かを吸収して強くなる、レベルアップする世界の仕組みはそういうことなのかもしれない。
もう一つ説明があったのは、悪魔だけでなく天使や精霊の存在について、である。
そもそも魔法は、自身の魔力をそのまま発動に活用するユリアンネが日頃使用しているような魔術と、霊的な存在である他者から力を借りるものがある。
主に精霊界にいる精霊から借りる精霊魔法、神界にいる神や天使から借りる神霊魔法、魔界にいる悪魔から借りる悪魔魔法などである。
この異界の存在は、人々からの信仰、魔力の奉納・吸収などで力を向上させるため、信仰を集めるために権能を顕示したがる者もいる。
ベリスは封印されるときに失った力を取り戻すためにも、魔力のこもる血や魂が欲しいのである。
「で、封印と依代って何が違うの?」
『依代はこの世界に来ている現身の一つを何らかの品に宿らせるものだから、異界での力も残るし、別の現身も召喚できるままだ。封印は力を封じられているから、そうはならない』
「やっぱり何かやらかしたんでしょう?それだけのことをされるって」
『……言いたくない』
「なんか怪しいわね」