睡眠ダガー
「あの後はそれほど進んでいないみたいね」
「仕方ないだろう。監禁している、麻薬を扱っている等の明らかな証拠がある拠点でないと、なかなか踏み込めないからな」
「それに、前の2拠点同時の情報が伝わっているはずだから、それらの証拠はすぐに隠滅しているだろうし」
「でも、ユリだけでなくニキアスさんの使い魔もアテにされているみたいじゃないか」
「あぁ、マンファンさんたち、使い魔がかなり有用だってわかったみたいで。使い魔を使える魔法使いを雇用したいと言っていたよ」
「え、もちろん私はお断りしているわよ」
「ユリは相変わらずだな。でも言われたら手伝っているなら似たようなものか」
肉屋と倉庫という“闇ギルド”の拠点に踏み込んでからしばらくしても、“闇ギルド”の壊滅の目処は立っていない。使い魔などで証拠を見つけられたときに1拠点ずつである。
“選ばれた盟友”の仲間たちは、秘密基地で共同生活を行いながら、シャドウとフェザーの兄妹、そして王国魔術師団員たちがトリアンダンジョンの到着階層を深めていくのを手伝っているままである。
ユリアンネは被害女性へサネブトナツメを使用した精神安定剤を差し入れする他、調合したポーションを冒険者ギルドに納品して魔導書の購入資金などを確保している。
「それにしても、ドロテアを誘拐しようとしたときの≪睡眠≫ダガー、微妙だったな」
「確かに。ダンジョンでも試して、魔物にも効果があるのは良かったが、人型に限定だし、首筋に傷をつけないと効果が無いんだから」
「本当。それだったら、ユリが習得した≪睡眠≫魔法の方が便利だよな」
仲間だけでダンジョンに潜ったときには、色々な魔法の練習をしているユリアンネ。あまり機会がなかった死霊魔法だけでなく悪魔魔法、そして最近購入できた魔導書の魔法などである。
「まぁ有用すぎる魔剣を悪党が持っていなくて良かったというべきか」
「そうね。最近にユリが習得した魔法こそ、犯罪者たちに使われたら恐怖だわ」
「ユリが犯罪者の言うことをきく奴隷になってしまったら……」
「想像したくもない!」
ユリアンネの笑顔の機会が増えて安心する仲間たち。