賭場への踏み込み3
「今です!」
ニキアスの合図で客に紛れていた魔術師団員が、油断していた男たちに≪氷刃≫≪氷槍≫や≪岩槍≫などを発動する。
「こんなものかな」
小さな扉から逃げ出そうとした者たちも外で待機していた団員たちに捕まったようであり、賭博場になっていた天井の高い広間での戦闘も落ち着く。
マンファンたちも、次は奥を確認しようと進んでいく。
バーカウンターに並んでいる酒類。この辺りも麻薬の有無を確認しないと、と考えながらさらに奥に進むと、ぐったりした女性を盾に飛び出してきた男がいる。
「ここは狭いから、魔法でやられたりしないだろう。ほら、どけよ。俺様が通るための場所を空けろよ」
ため息をつくマンファン。
「どうしてお前たちはそうなんだ」
「うるせぇ、負け犬の遠吠えだろうが!」
「ぐぇ。なんだ?」
自分の胸に何か銀色のものが突き出している。背中に痛みがあり、背中から突き刺さったのだろうが、後ろに敵は居なかったはずなのに。
自分が足から崩れていくのを感じ、女性を抱えに飛び出してくる衛兵の姿が見える。
「シミ、これって本当に反則だよな。魔法使いの使い魔ってこんな怖いって知らなかったぞ」
「ニキアスさん曰く、ここまでのはそんなに居ないそうですから安心してください」
「まぁ味方で良かったと安心はするがな」
ここでも“闇ギルド”の者たちは縛り上げて怪我は治しながら犯罪奴隷にしていく。ここでの被害女性も肉屋での被害者と同様に回復させた後のケアは衛兵団が受け持つ。身寄りがいないならば神殿などがサポートする約束である。
単なる客だったつもりの男たちも住所や名前など全て記録された上で、一軒一軒衛兵の馬車で送り届けられて、住所確認を兼ねて家族と一緒に説教を受けることになった。