ハイオーク集落
盗賊騒動の夜も明けた後は騒動らしいことも発生しないまま、21階層の出口、22階層への階段に近づいて来た。
ここまでの階層の感じから、そこの階層で多く見かけた魔物の集落が出口を守っているのだと推測される。この階層ではサーベルタイガーかハイオークである。
「あれ、明らかに家っぽい物があるからハイオークの集落ね」
遠くから確認していると、他の冒険者達がその集落のまわりを取り囲んで色々と細工をしているようである。
「あいつら、左腕の上の方に青色の布を巻いているよな。大規模クランの“極東の輪舞曲”だな」
「21階層って、領軍もだけど色んなクランが育成しているのね。Cランク魔物だけになるから訓練になるのかな。まぁ魔物以外は酷でない環境だし。私たちみたいに鉄級冒険者も混じる中途半端な階層でもあるから、盗賊も居たけれど」
「で、その大規模クラン様は何をしているのかな?」
集落なだけあり、今までの単なる草原よりも多くのハイオークが近くを徘徊している。それを、草原とはいうものの少しある岩場や窪地などを活かして罠を設置して、そこに誘い出して倒しているようである。罠らしい罠でなく単純に伏兵として待ち構えているところへ誘導しているだけの場合もある。
「上手いものだね。あぁやって効率的に若手に経験を積ませているんだね」
「確かに平地で敵を探索するよりも良いわね。探索の経験も重要だけど、Cランク魔物への戦闘経験に限るならば効率的ね。流石は大規模クランね」
「落とし穴や杭などはわかるけど、あの魔法らしいものは何かしら」
地面に魔法陣らしき物を描いていて、そこに足を踏み入れるように誘い込むと炎が噴き上がる物があったり、何かが書かれているような札がいくつかぶら下がった紐に触れると痺れて動けなくなったり、日頃によく見る魔法とは異なった体系の魔法のような物も駆使しているようである。