ドロテア誘拐犯2
「それで、生きている2人の犯罪奴隷の扱いですが」
こちらの様子が変わったことを認識はしても、話を続ける衛兵。
「“闇ギルド”の情報を入手できる貴重な犯罪奴隷ですので、ぜひとも我々衛兵に引き渡しをお願いしたいのですが」
衛兵団に預けても、捕らえた犯人を口封じに殺されたことを覚えている仲間たちは素直に頷くことができない。
「色々とご尽力を頂いたところを申し訳ありませんが、その2人はこちらで引き取らせてください」
「そうですか。残念です」
色々なことがあり頭の整理が追いついていない仲間たちを置いておいて、シミリートが諸手続き、犯罪奴隷になった2人の主人に自分を登録し直すことなども全て行なって合流してくる。
「シミ、どういうことなの!」
「いや、勝手に決めてすまない。ただ、このまま東部に移動するぞ」
道中で、縁の薄い衛兵団の拠点に預けていると口封じされる懸念もあっての行動であることを仲間に説明するシミリート。
「とは言っても、こいつらをどうするのよ?」
「ユリ、すまないが金を出してくれ」
「え?良いけれど、どういうこと?」
仲間の中で一番経済的に余裕があるユリアンネに、借家の費用を負担して貰うというのである。そこを、信頼できる衛兵のマンファンたちも来られる拠点とし、必要な情報を入手していく、というのである。
「もう受け身では安心して生きていけない。こちらから“闇ギルド”をつぶしに行く」
自分たちがトリアンから逃げ出すことになった“蒼海の眼”クラン、そしてオトマンの仇でもあるエードルフ・シャイデン男爵の私兵でもある“闇ギルド”。
かといって自分たちの力だけでは対抗できるわけでないので、衛兵団や王国魔術師団を巻き込んで行く計画であるとシミリートは言う。